日下開山という言葉は、大相撲だけでなく柔術や剣術などの伝統武道の伝書や免許皆伝の文脈でも用いられてきました。武道において「開山」を名乗ることは、技術の極致に達し、自己の流派を揺るぎないものにした証でした。
相撲における日下開山も、単に勝率が高いだけの力士に与えられたわけではありません。土俵上での礼儀作法、立ち振る舞い、武士道に通じる高潔な精神性を備えていることが不可欠な条件とされていました。
この「心技体」の一致を求める思想は、現代の大相撲における横綱推挙基準(大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる成績に加え、極めて高い「品格・力量」が求められる点)にそのまま継承されています。勝つことのみを追求する格闘技とは一線を画し、道としての尊厳を保ち続ける相撲の根底には、日下開山が求めた天下無双の美学が脈々と息づいています。