隔壁が破壊された瞬間、客室内の高圧空気が一気に機体内尾部に流れ込んだ。その凄まじい風圧は、尾部構造を内側から破壊し、垂直尾翼の大部分と補助動力装置(APU)を吹き飛ばした。
さらに最悪だったのは、油圧配管の損傷だ。大型旅客機の制御を担う4系統の油圧ラインがすべて同時に切断され、作動油が完全に流出した。操縦桿(カン)もペダルも、機首を動かす舵面と一切の連絡を絶たれた。
機体は左右に激しく揺れるダッチロールと、上昇・下降を繰り返すヒューゴイド運動という壊滅的な迷走状態に陥った。機長をはじめとする高濱乗務員たちは、左右エンジンの推力調整のみで機体をコントロールしようと、暗闇の山岳地帯で32分間にも及ぶ壮絶な闘いを繰り広げた。彼らの必死の操作は航空工学上「奇跡的」と評されるが、物理的な限界を超えた機体は御巣鷹の尾根へと激突した。