インターネット上のQ&AサイトやSNSで散見される最大の誤認は、「カレンダーが祝日(lịch đỏ)なら、会社を休む権利があり、出勤すれば必ず休日割増賃金(35%以上)が支給される」という思い込みです。この法的な誤解が、労務トラブルの火種として燻り続けています。
労働法上、割増賃金35%以上が義務付けられるのは、前述した労働基準法第35条に基づく「法定休日」の労働に限られます。法定外休日である祝日や土曜日に労働させた場合、就業規則に特別の取り決めがない限り、1日8時間・週40時間を超えない範囲であれば、企業側は通常の賃金(割増なし)を支払うだけで法的な基準をクリアできてしまいます。求人票に記載された「年間休日120日以上」と「年間休日105日」の企業の間には、祝日をすべて公休としてカウントしているか否かという決定的な境界線が存在します。
また、2019年4月から全ての企業に義務化された「年5日の年次有給休暇取得義務」を巡り、一部の企業が「祝日をあらかじめ有給休暇取得奨励日として消化させる」手法をとっている実態も、現場の不満を加速させています。祝日カレンダーの並びをただ眺めるだけでなく、雇用契約書に記された「年間所定労働時間」と「所定休日」の規定を正確に読み解かなければ、思わぬ生活設計の狂いが生じるリスクを忘れてはなりません。