静かな変革の波は、地域の産業構造そのものにも及んでいる。静岡県内には元々、製造業や自動車部品メーカーなどの優れたモノづくり企業が集積していたが、外部からのデジタル人材やスタートアップの流入によって、激しい化学反応が起き始めている。
物流や交通のオープンデータを活用した配車アルゴリズムの開発、次世代電池の冷却技術、さらにはドローンを用いた離島や山間部への緊急配送など、地元企業が持つ加工技術とスタートアップの発想力が結びついた新事業が相次いで誕生した。
県内の老舗金属加工会社の経営者は笑みを浮かべる。「最初はITや自動運転と言われてもピンとこなかった。だが、彼らと一緒に現場の課題解決に取り組むうちに、自社の技術がまったく新しい用途で活きることが分かった。若手社員の目の輝きが変わったことが、何よりの成果だ」。閉塞感が漂っていた伝統産業に、明確なブレイクスルーの兆しが見えている。