チケット先行予約の落選後に販売されることが多い「注釈付き指定席」「見切れ席」「サイドバック席」。これらの席種は通常、北東スタンドおよび北西スタンド、あるいは北スタンドの端に割り当てられます。販売要件として「ステージの一部、演出、出演者、またはスクリーンが見えにくい場合があります」と明記されるため敬遠されがちですが、武道館においては独自の価値を持っています。
北東・北西スタンドの最大の特徴は、ステージ最前列からの物理的な「近さ」です。アリーナ最前列と同等、あるいはそれ以上に演者との距離が直線上で十数メートルという位置に配置されるブロックが存在します。ステージ袖のモニタースピーカーや袖幕の奥、スタンバイ中の演者の姿が視界に入ることもあり、バックステージの空気をダイレクトに味わえるプレミアムな視界が広がります。
一方で、明確なデメリットも存在します。ステージの真横あるいは斜め後方から見下ろすアングルとなるため、以下のような制限を受けます。
- ステージ中央奥に設置されたメインLEDビジョンの映像が完全に死角に入る、あるいは斜めからしか見えない。
- 左右に組まれた音響スピーカー(ラインアレイスピーカー)や照明タワーが演者と被り、立ち位置によっては姿が完全に隠れる。
- ステージ正面に向けて緻密にプログラミングされたレーザー演出やプロジェクションマッピングの全貌が把握できない。
つまり、「ライブ全体の映像美や総合演出を堪能したい」読者にとっては不満が残る可能性があるものの、「演者の肉声を間近で感じ、生々しい表情や仕草を近くで見たい」というファンにとっては、定価以下あるいは同額で手に入る破格の「良席」へと化ける構造になっています。