日本人の美意識や対人関係において、「情」は常に中心的な役割を果たしてきた。夏目漱石が描いた近代人の葛藤から、昭和を代表する国民的映画『男はつらいよ』の車寅次郎が魅せたお節介な温もりまで、私たちは「お情け」や「情け深い」という言葉に独特の郷愁を覚える。
いまやその波及効果は国内にとどまらない。NetflixやAmazon Prime Videoといったグローバル配信プラットフォームでは、過剰なテクノロジー社会の裏返しとして、泥臭い人間模様を描いたヒューマンドラマが世界的なトレンドとなっている。NHKのドキュメンタリー番組でも、孤立化が進む都市部で「人情」を再定義する特集が組まれ、大きな反響を呼んだ。
合理主義の対極にあるもの。理屈では割り切れない他者への寄り添い。それが日本文化の中で育まれてきた情の原風景だ。