この独自の麺文化のルーツを辿ると、甲斐の国を治めた名将・武田信玄の時代へと突き当たる。戦国時代、陣中食として野外で手軽に作れる小麦粉料理が広まり、それが時代を経て日常の郷土料理へと定着していったとされる。甲府盆地周辺の農家では、小麦の収穫期である初夏、農作業の合間に手早く作れる主食として「おざら」が親しまれてきた。
大きなざるに盛った麺を大勢で囲んで食べたことから「おざら」という名がついたという説も根強い。質実剛健な甲州人の気質と、厳しい暑さを乗り切るための生活の知恵が凝縮されたこの一皿は、歴史の重みを今に伝える貴重な食文化だ。