なぜ私たちは、これほどまでに他人の醜聞や、プライベートな告白に惹かれるのだろうか。『蒲団』がこれほど長く読み継がれ、今また再注目されている理由は、人間が本質的に持つ「覗き見趣味(ボヤリズム)」を刺激するからだ。他人の最も隠したい秘密を知ることで、奇妙な安堵感や興奮を覚えるのは、人間の抗えない本能である。
花袋は、読者が持つその下世話な好奇心を見透かしていたかのように、自らのプライバシーを切り売りしてみせた。読者は時雄を「最低だ」と蔑みながらも、ページをめくる手を止めることができない。その構造自体が、現代の週刊誌報道や炎上系コンテンツの消費スタイルと完全に一致している。