すべての発端は、昭和から平成へと元号が変わったばかりの1989年3月7日にさかのぼる。茨城県から徳島県貞光町(当時)の親戚宅を訪れていた松岡伸矢くん(当時4歳)は、父親がほんの目を離した隙に、文字通り煙のように消え去った。その時間はわずか40秒。周囲は山林に囲まれており、大人の足でもすぐに移動できるような場所ではない。警察や地元住民による大規模な捜索が行われたが、遺留品一つ見つからなかった。
この事件をさらに不可解にしたのが、失踪直後に親戚宅にかかってきた一本の不審な電話だ。徳島弁を話す女からの「ナカハラマリコの母」と名乗る電話は、後に家族の行動を把握した何者かによる嫌がらせ、あるいは誘拐犯からの接触ではないかと疑われたが、真相は藪の中である。この「40秒の神隠し」と「謎の電話」という二つの要素が、事件の猟奇性と神秘性を高め、日本を代表する未解決事件として長く人々の記憶に刻まれることとなった。