彼の描く世界において、主役は間違いなく海の生命たちだ。なかでも特別なたたずまいを見せるのが、愛らしい笑顔を浮かべながら大海原を泳ぐイルカである。ラッセンの画面作りにおける最大の強みは、海面の上と下を同時に描く「2分割構図(スプリット・ビュー)」の卓越した技法にある。
燦々と注ぐ太陽光が水面で屈折し、海底の砂地にまばゆい光の格子模様を描き出す。あるいは、夜の静寂の中で月光が波間を照らし出す。生まれ故郷であるハワイのマウイ島で、日常的に海に入り波と戯れてきた彼だからこそ捉えられた「生の光の感触」だ。単なるグラフィックデザインではなく、マリンアートのパイオニアとしての誇りが、キャンバスの細部にまで宿っている。