どうしても愛犬がお尻を触られるのを嫌がって暴れる場合や、飼い主が直腸への挿入に強い恐怖心を抱いている場合、無理強いは禁物です。犬がパニックを起こして咬傷事故に発展したり、暴れるストレス自体で体温が急上昇してしまっては本末転倒だからです。こうしたケースでは、お尻以外の部位を用いたアプローチを選択します。
現在、動物病院や先進的な飼い主の間で普及しているのが動物用耳式(鼓膜)体温計です。赤外線センサーを用いて耳の奥にある鼓膜周辺の温度を測定する機器で、わずか1〜2秒で検温が完了します。直腸温に比べて0.3〜0.5℃ほど低く出る傾向がありますが、暴れる隙を与えずに測定できる利便性は極めて優れています。ただし、外耳炎にかかって耳道が腫れていたり、大量の耳垢が詰まっていると赤外線が遮られて大幅な誤差が生じるため、日頃の耳掃除と健康状態の確認が前提条件となります。
体温計が手元にない緊急時には、手掌で愛犬の体を触診することで熱の有無をある程度推測できます。触るべきポイントは、毛が薄く血管が体表近くを通っている以下の4箇所です:
- 耳の根元と内側の皮膚:普段よりも明らかに熱を帯びており、触れた手のひらに熱気が伝わる。
- 肉球と足先:触った瞬間に「アツっ」と感じるほど熱く、乾燥している。
- 内股・下腹部:被毛が薄い腹部が異様に熱く、皮膚に赤みが差している。
- 口腔内(歯茎や舌):唇をめくって触れた際、唾液の粘り気が強く、歯茎が鮮紅色に充血している、あるいは乾燥している。