脚付きマットレスに関して広く信じられている誤解の一つに、「脚が付いていてベッド下に空間があるから、敷布団よりも通気性が良くカビが生えにくい」という言説があります。しかし、これは内部構造を知らない消費者を安心させるための俗説に過ぎません。
脚付きマットレスを裏返してみると、そこにあるのは通気孔ではなく、厚い合板(ベニヤ板)や頑丈な木製角材のフレームです。マットレスの内部は「不織布・ウレタン・スプリング・底板」が隙間なく密閉されたサンドイッチ構造になっています。人間は一晩にコップ1杯分(約200ml)の寝汗をかきますが、その湿気は体温に押されて下層へと沈降していきます。底面の密閉された板が湿気の「フタ」として機能し、内部に湿気が滞留し続ける構造になっているのです。
さらに事態を悪化させるのが、「脚付きマットレスのカビ対策」の難しさです。一般的なマットレスであれば、休日に壁へ立てかけて風を通したり、除湿シートを簡単に交換できます。しかし、重量が30kg前後あり、鋭利な木製脚が生えた脚付きマットレスを、一人暮らしの狭いワンルームで持ち上げて立てかけるのは重労働以外の何物でもありません。壁や床を傷つけるリスクも高く、現実には一度設置したら引越しまで放置されるケースが大半です。
数年後に退去する際、ベッドを動かして初めて「マットレスの裏面が真っ黒なカビで覆われていた」「フローリングにカビが色素沈着して原状回復費用を請求された」という悲劇に見舞われる部屋が毎年無数に存在します。内部のコイルスプリングが湿気で錆び付き、本来の弾力を急速に失ってギシギシと異音を発する寿命の前兆も、この湿気滞留が主因です。