秋の大三角が存在しない決定的な理由とは?秋の四辺形と1等星の真相

秋の大三角が存在しない決定的な理由とは?秋の四辺形と1等星の真相

秋の大三角が存在しない決定的な理由とは?秋の四辺形と1等星の真相の詳細について、専門知識を基に徹底解説します。

「春・夏・冬には大三角があるのに、なぜ秋だけ存在しないのか」。この疑問に対する天文学上の回答は極めてシンプルかつ構造的です。夜空の目印となる「大三角」を成立させるための絶対条件である「空の高い位置に輝く複数の1等星(またはそれに準ずる圧倒的に明るい星)」が、秋の星空には圧倒的に不足しているからです。

全天に21個ある1等星のうち、日本の秋(9月下旬〜11月中旬の20時〜21時頃)の夜空で見える1等星は、みなみのうお座の主星であるフォーマルハウト(視等級1.16等)ただひとつしかありません。しかも、フォーマルハウトは南の空のかなり低い位置(東京付近での南中高度は約24度)を横切るため、都市部のビルや街路樹、あるいは少しの霞(かすみ)によって簡単に視界から隠れてしまいます。

一方、天頂(頭の真上)付近を見上げると、そこには1等星こそ存在しないものの、ほぼ同じ明るさの2等星〜3等星が4つ、夜空に定規で引いたような美しい長方形を描いて並んでいます。これがペガスス座の胴体部分にあたる「ペガスス座の大四辺形」、通称「秋の四辺形」です。文部科学省の学習指導要領やプラネタリウムの解説現場において、南の低空にポツンと輝くフォーマルハウトを使って無理に巨大な三角形を作るよりも、頭上で圧倒的な存在感を放つ「四辺形」を基準点(ガイドライン)にする方が、アンドロメダ座やカシオペヤ座、さらにはペルセウス座を探す上で遥かに合理的かつ実用的であるため、「秋は四辺形」というルールが定着しました。

実は存在する!「裏・秋の大三角」を構成する3つの2等星(アルフェラッツ・ハマル・ディフダ)

「秋の大三角は完全に架空の言葉なのか」というと、決してそうではありません。欧米の天文ガイドブックや国内のベテラン天文指導員の間では、秋の四辺形の東側(左側)から南の空へ向かって伸びる「非公式の秋の大三角」が古くから知られています。この三角形を形作るのは、すべて視等級2.0等前後の「2等星トリオ」です。

  • アルフェラッツ(アンドロメダ座α星 / 視等級 2.06等):秋の四辺形の北東の角を兼ねる青白い巨星。「馬のへそ」という意味のアラビア語に由来し、かつてはペガスス座とアンドロメダ座の双方に所属していた歴史を持ちます。
  • ハマル(おひつじ座α星 / 視等級 2.00等):アルフェラッツの南東方向に輝く、ややオレンジ色を帯びた2等星。おひつじ座の頭部にあたり、アラビア語で「羊」そのものを意味します。
  • ディフダ(くじら座β星 / 視等級 2.04等):別名「デネブ・カイトス(くじらの尾)」。秋の四辺形の東側の2つの星をそのまま南へ伸ばした先にある黄色い巨星で、2等星の中ではフォーマルハウトに次いで南の空で目立つ存在です。

このアルフェラッツ(2.06等)・ハマル(2.00等)・ディフダ(2.04等)の3星を結ぶと、夜空に極めて整った二等辺三角形が浮かび上がります。3つの星の明るさが「2.00〜2.06等」と小数点以下まで驚異的に揃っているため、空気の澄んだ高原や郊外で見上げると、驚くほどバランスの取れた三角形として認識できます。ただし、都会の明るい夜空(光害地)では2等星は肉眼でギリギリ見えるかどうかの明るさにとどまるため、夏や冬の1等星トライアングルほどの知名度を獲得するには至りませんでした。

佐藤 大輔
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佐藤 大輔

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