企業の法務部や人事担当者が最も神経を尖らせるのが、「偽装請負(ぎそううけおい)」のリスクです。偽装請負とは、契約書上は「請負契約」や「業務委託契約」という看板を掲げながら、その実態は発注企業が受託者の労働者に対して直接指揮命令を下し、実質的な労働者派遣や労働者供給を行っている違法状態を指します。
厚生労働省が定める「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(労働省告示第37号)」に基づき、行政当局は以下のポイントから偽装請負かどうかを厳格に判定します。
- 業務遂行の指示命令:発注者が請負側の作業員に対し、作業の進め方や割り振りを直接指示していないか。
- 労働時間の管理:発注者が請負側作業員の始業・終業時刻、休憩時間を管理し、タイムカードを打刻させていないか。
- 服務規律の適用:発注企業の就業規則や服装規定などを請負側作業員に強制していないか。
- 機械・資材の自己負担:業務に必要な機材や専門的ツールを自らの責任と費用で調達・管理しているか。
大手ITベンダーの現場責任者は、当時の取材で次のように漏らしています。「納期が迫る中、請負契約で常駐している外部エンジニアに対し、日常的にチャットツールで直接タスクを指示し、毎朝の朝礼への参加を義務付けていた。労働局の立ち入り調査が入った瞬間、すべて偽装請負と断定され、是正勧告と社名公表の危機に震えた」。
偽装請負と判定された場合、発注者は労働者派遣法第40条の6に基づく「労働契約申込みみなし制度」の対象となり、受託側作業員に対して直接雇用を申し込んだものとみなされるリスクを負います。また、労働者派遣法違反や労働基準法違反として刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金など)が科される可能性があり、企業の社会的信用を根底から失墜させます。