謙信と馬上杯という強烈なビジュアルイメージが全国的に定着した背景には、映像メディアの存在が大きい。角川映画の金字塔である映画『天と地と』では、赤塗りの馬上杯を掲げて戦陣を切る圧巻のシーンが描かれ、観客の心に強く刻み込まれた。豪快に酒を飲み干す演出は、まさに時代劇ファンが憧れるヒーロー像そのものだった。
現在ではNHKオンデマンドなどで過去の名作戦国時代劇や高品質な歴史ドキュメンタリーを手軽に視聴できる環境が整っている。映像作品における美化や脚色を理解しつつ、実際の歴史的背景と比較鑑賞するファンが増えたのも近年の傾向だ。メディアが創り出した「酒豪伝説」のカッコよさと、実史における繊細な祈りの道具という二面性こそが、この酒器の魅力をよりいっそう奥深いものにしている。