ネット上のQ&Aサイトや医療まとめ情報において、極めて危険なバイアスが生じています。それは、「起立性タンパク尿は良性で成長とともに消えるのだから、病院に行かず放置しても構わない」という乱暴な論調です。この主張には重大な論理の飛躍が存在します。
正確に言えば、「専門医の確定診断を受けた起立性タンパク尿は治療不要」であって、「健診で引っかかった尿蛋白を自己判断で起立性と思い込んで放置すること」は極めてハイリスクです。なぜなら、無症候性の初期IgA腎症や膜性増殖性糸球体腎炎であっても、初期段階では自覚症状が全くなく、随時尿で「蛋白(+)」とだけ出る場合があるからです。
また、起立性蛋白尿に潜血(顕微鏡的血尿)が混ざっている場合、単なるナットクラッカー現象の血管内圧上昇による微細出血にとどまらず、活動性の糸球体腎炎が裏で同時に併発している可能性を排除できません。専門医による尿沈渣(尿中の細胞成分の顕微鏡観察)や血液生化学検査、超音波エコーによる左腎静脈の血流評価を通過して初めて「放置(経過観察)してよい」という安全切符が手に入るのです。このプロセスをショートカットすることは、取り返しのつかない腎不全へのカウントダウンを見落とす行為に他なりません。