ネット上や一部の噂話では、「プラッセだいわが潰れたということは、えびの市全体の商圏が完全に死んだ証拠だ」「もう大手スーパーは二度と進出してこない」といった極端な悲観論が囁かれることがあります。しかし、流通業界の定量的視点に立つと、そこには重大な事実の誤認と盲点が存在します。
第1の誤解は、「えびの市民の消費意欲そのものが消失した」という見方です。実際には市民の消費需要がゼロになったわけではなく、自家用車を運転できる現役世代やアクティブシニアが、小林市や鹿児島県姶良・湧水・吉松方面の大型ディスカウント店や複合モールへと購買行動を流出させているというのが現実です。つまり、需要が存在しないのではなく、「近隣都市に吸い上げられている(購買力の市外流出)」状態にあります。
第2の盲点は、「GMSという業態自体の限界」と「食品スーパーの採算性」を混同している点です。プラッセだいわのような昭和〜平成型の大型GMS(衣食住総合型)は全国各地で急速に撤退が進んでいますが、生鮮食品と惣菜に特化した高効率な中小型スーパーマーケットや、EDLP(エブリデー・ロープライス)を掲げる特化型店舗であれば、人口1万〜2万人規模の商圏でも十分に利益を確保して存続している事例が九州内にも多数存在します。
商圏の規模に見合わなくなった旧来型フォーマットが役目を終えたのであり、適正規模の食料品インフラに対する地元需要は依然として旺盛です。「えびの市ではスーパー経営が成り立たない」という説は、流通構造の本質を見誤った誤解と言わざるを得ません。
【プロの結論】地方都市のフードデザート問題と行政・民間が取るべき生活防衛策
地方都市における大型総合スーパーの撤退は、家族社会学や地域経済学の観点からも極めて深刻な課題を提起しています。かつて3世代同居が当たり前だった時代、大型店は家族団らんのレジャー空間であり、地域コミュニティの結節点でした。しかし、核家族化と単身高齢世帯の増加が進んだ現代において、巨大店舗の撤退は即座に「フードデザート(食の砂漠化)」を引き起こします。
これからのえびの市において、住民や行政、民間事業者が取るべき行動基準は以下の通りです。
【行政・自治組織が早急に推進すべき施策】
・店舗跡地の用途指定見直しと民間参入を促す減税・インセンティブ設計
・デマンド型乗合タクシーやコミュニティバスの巡回ルートを主要生活拠点へ再編
・民間移動販売業者への燃料費・車両維持費の助成による運行継続支援
【地域住民が実践すべき生活防衛の判断基準】
・自力移動が可能なうちに、近隣ドラッグストアの生鮮品ラインナップや宅配サービスの活用ルートを複数確保しておくこと
・「1店舗に依存する生活」から脱却し、生協の個配サービスやネット通販、移動販売を組み合わせた複合的な調達体制を構築すること