公開後長きにわたり多くのファンを引きつけてやまない最大の要因は、アンハサウェイ演じるアンディの変身コーデが単なる「ブランドの着せ替え」にとどまらない点にあります。当時のメイキングインタビューやパトリシア・フィールドの手記によると、彼女はアンディのスタイリングに際して「 runway(ランウェイ)のコピーではなく、映画のキャラクターが持つ知性と若さを共存させること」を徹底しました。
象徴的なのが、同僚ナイジェルの手ほどきによって『ランウェイ』編集部のクローゼットから選び出された一連のピースです。ファッションを軽蔑していたアンディが身にまとうシャネルのロングブーツは、彼女が「業界のルールを受け入れた」宣誓布告であり、周囲の嘲笑を尊敬へと塗り替えるパワーアイテムとして機能しました。
パトリシアは、全身を単一のメゾンで固めることをあえて避けました。シャネルのジャケットにヴィンテージのキャップを合わせたり、ハイブランドのドレスに新進気鋭のデザイナーズ小物をミックスさせたりすることで、2026年代半ばの現在見返しても古臭さを感じさせない、エッジの効いた普遍性を生み出しています。