移動体通信の普及を加速させたのは、技術の進化だけではない。ポップカルチャーによるイメージの固定化も大きな役割を果たした。80年代の映画『ウォール街』で、マイケル・ダグラス演じるカリスマ投資家ゴードン・ゲッコーが砂浜を歩きながら巨大な端末で取引指示を出すシーンは、世界中の視聴者の脳裏に深く刻み込まれた。
巨大な端末は、単なる通信手段を超えて「成功者の証」として機能し始めた。当時の電気通信産業は、法人需要中心の市場から個人消費者が憧れるライフスタイルブランドへのシフトを余儀なくされた。富と権力を誇示するためのツールとして普及が加速した点は、通信史における皮肉で興味深いトピックだ。