ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「自分はお酒を一滴も飲まないから、肝臓の病気やかゆみとは無縁だ」という誤った思い込みが根強く散見されます。しかし、これは極めて危険な誤解です。
国内における肝疾患の実態を見ると、近年急増しているのはアルコール歴のない人に見られる脂肪性肝疾患(MASLD/MASH:代謝異常関連脂肪肝炎)です。国内の成人健診受診者のうち約30%が脂肪肝に該当すると推計されており、運動不足や食生活の欧米化を背景に、非飲酒者であっても肝臓の炎症から線維化、肝硬変へと静かに進行します。
さらに、女性に好発する難病「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」も忘れてはなりません。患者の男女比は約1対9と圧倒的に女性に多く、中年以降の女性が「原因不明の全身のかゆみ」をきっかけに発見されるケースが多出しています。自己免疫の乱れによって微小な胆管が破壊される疾患であり、アルコール摂取の有無とは全く関係がありません。「酒を飲まない=肝臓は健康」という固定観念こそが、治療の遅れを招く最大の障壁となっています。