医療従事者の説明と、実際に身体へ異物を埋め込んだ患者の実感との間には、時に小さくないギャップが生じます。全国の心臓病友の会手記や医療相談室に寄せられる生の声を紐解くと、植え込み直後と数年後で患者の心情に劇的な変化が起きていることが分かります。
「手術前は、駅の階段を数段上がっただけで目の前が真っ暗になり、家計を支える仕事も辞めざるを得ないのかと絶望していました。しかし植え込みの翌朝、頭に血がすっと巡るような温かさを感じ、あれほど重かった息苦しさが消え去った時の感動は今でも忘れられません」(72歳男性・洞不全症候群で植え込み後5年経過の手記より)
こうした劇的な体調回復と生存の安堵がある一方で、SNSや知恵袋等のコミュニティでは、特有の違和感や孤独感に苛まれる患者の声も散見されます。
「左鎖骨の下に触れる硬い異物感が半年経っても抜けず、寝返りを打つたびに『もしリードが外れたら』と冷や汗をかいた」「家族が腫れ物に触るように接してきて、散歩に出るだけで過剰に制止されるのが精神的に苦しい」
現場の心臓血管外科医は「現代のペースメーカーは強固に筋肉や皮下に固定されており、日常生活の身のこなしでリードが抜去することはまずない」と指摘します。しかし、自分の命が掌サイズの金属に委ねられているという事実そのものが、無意識の心理的重圧を生み出しているのです。この「機械への恐怖」を和らげ、心身ともに自立した生活へ戻れるかどうかが、真の意味での回復の分水嶺となります。