製パン業界における市場リサーチやSNSの消費者アンケートを検証すると、「パンの耳が香ばしくて最も好きだ」という根強い愛好派が存在する一方で、「固くてパサつくため切り落とす」という層も一定数存在し、嗜好の二極化が見られます。
近年では、サンドイッチ用や高級食パン専門店を中心に「耳まで柔らかい食パン」や「白い食パン」の需要が拡大しました。では、なぜ白い食パンは耳が茶色くならないのでしょうか。その製造現場を取材すると、主に以下の2つの高度な製法が用いられていることがわかります。
- 低温長時間の焼成技術:オーブンの設定温度をメイラード反応が急激に進む150℃未満(およそ120℃〜140℃)に抑え、蒸気(スチーム)を充填しながらじっくり中まで火を通す。
- 高保水性配合と特殊型:生地中の水分保持力を極限まで高め、型の中で表面が乾燥・脱水するのを防ぐことで、外側の変色と硬化を抑制する。
白い食パンは技術的な工夫によって「耳の硬さ」を克服した革新的な商品ですが、裏を返せばメイラード反応による芳醇な香気成分や抗酸化物質の恩恵を抑えた仕上がりともいえます。製パン技術の進化により、消費者が香ばしさと柔らかさを自由に選択できる時代を迎えています。