福岡市営地下鉄の歴史において最大のターニングポイントとなったのが、七隈線延伸の経緯と現在に至る軌跡です。かつて天神南駅止まりだった七隈線は、天神地下街を約500メートル歩かなければ空港線へ乗り換えられないという「構造的ボトルネック」を抱えていました。この不便さを解消すべく総事業費を投じて進められた博多延伸事業は、中間駅である櫛田神社前駅の誕生とともに、福岡市南西部(城南区・早良区など)から博多駅へのアクセス時間を約14分短縮する劇的な地殻変動をもたらしました。
福岡市交通局の公表データによると、博多駅延伸後の七隈線の一日平均乗車人員は想定を上回るペースで推移しており、2026年現在も堅調な右肩上がりを維持しています。特に博多駅地下の乗り換えフロアは、動く歩道を備えた専用連絡通路によって結ばれており、空港線と七隈線の乗り換え方法は案内サインに従って歩行するだけで約3分〜4分で完了します。かつての「天神地下街ダッシュ」を経験した世代からは「もはや別世界の利便性」と驚嘆の声が上がるのも無理はありません。
しかし、利便性の向上は同時に強烈な「混雑」という副作用を生み出しました。特に平日の朝7時45分から8時30分にかけての薬院駅や博多駅到着ホームでは、ドア付近に乗客が滞留し、1本見送らざるを得ないケースが散見されます。交通局では新型車両(3000A系)の追加投入や運行間隔の過密化で対応を進めていますが、コンパクトシティゆえの人口密集が駅構内のキャパシティを限界近くまで押し上げているのが偽らざる現場の実態です。