実務や執筆において最も注意すべきなのは、「多勢に無勢の誤用」です。ネット上の掲示板やSNSでは、以下のような不適切な文脈で使われるケースが散見されます。
典型的な間違いが、「多勢に無勢だったが、奇跡的に勝利をもぎ取った」という使い方です。「多勢に無勢」という言葉自体に「勝負にならず太刀打ちできない」「負けが不可避である」という結果の含意が強く織り込まれているため、その後に「勝った」という展開を続けると文章の座りが非常に悪くなります。逆転勝利を表現したいのであれば、「多勢に無勢の絶望的な状況を覆し」と条件付けを行うか、あるいは「圧倒的な兵力差を跳ね返し」と言い換えるのが日本語として自然です。
また、英語圏のビジネス交渉などで状況を伝える場合、定型句としては「be outnumbered」(数で圧倒されている)が直訳として最も機能します。海外とのカンファレンスで「We were completely outnumbered in that committee(あの委員会では完全に多勢に無勢だった)」と表現すれば、相手にも力関係の偏りが即座に伝わります。