「おいでや」と最も混同されやすいのが、京都の花街や老舗旅館などで耳にする「おいでやす」、そして山口県を代表する方言「おいでませ」です。これらは語頭に同じ「おいで」を冠しているものの、対象となる相手、敬意の度合い、使用される場面において明確な境界線が存在します。
京都の伝統的な商人言葉である「おいでやす」は、標準語の「いらっしゃいませ」に直結する接客用語です。さらに京都には、常連客や遠方からわざわざ足を運んだ客に対してより深い敬意を示す最上位の「おこしやす」が存在し、明確な使い分けがなされています。一方で「おいでませ」は山口県(長州弁)で広く使われる歓迎の挨拶であり、こちらも「ようこそおいでくださいました」という敬意を含んだ表現です。
各表現の決定的な違いと適用シーンを客観的に比較したデータは以下の通りです。
このように、「おいでや」は目上の人に対する敬語としては成立しません。上司や取引先に対して「いらしてください」と伝えたい場合は、「お越しください」「いらしてください」「ぜひおいでください」といった標準的な敬語表現を選択するのが社会人としての基本マナーです。