行政境界線が入り組んでいる事実は、現地で働くスタッフや来訪者、周辺住民にどのような影響を与えているのでしょうか。SNS上の声や現地でのヒアリング調査から、興味深い日常のリアルが浮かび上がってきます。
「ダイバーシティでお買い物をして、レインボーブリッジの夜景を見にアクアシティ側の展望デッキへ移動したら、スマートフォンの防災速報メールの送信元が江東区から港区に切り替わって驚いた」(20代・観光客)
「ウーバーイーツなどのフードデリバリーを頼む際、境界線付近のベンチにいると配達員が区境の道路を挟んで迷ってしまい、品川区側で合流するのに苦労した」(30代・イベント参加者)
「湾岸エリアのタワーマンション購入を検討した際、有明(江東区)と台場(港区)では同じような水辺の眺望でも、子育て支援や医療費助成の所得制限ルール、行政サービスの窓口までの距離が全く違うため慎重に調べ上げた」(40代・湾岸在住ファミリー)
現場を取材して特に象徴的なのは、江東区青海に位置する「ダイバーシティ東京 プラザ」から、港区台場の「フジテレビ」方面へとつながる歩行者専用道路「ウエストプロムナード」です。この広々とした遊歩道を散策していると、利用者は区境を意識することはありません。しかし、道路脇に設置されたゴミ箱の分別区分や、落とし物を届け出る際の管轄窓口は、立つ位置によって異なる自治体の管轄下に入ります。行政の縦割りと、都市空間の回遊性というギャップが最も顕著に現れる瞬間です。