夏帆のキャリアを語る上で欠かせないのが、2004年に起用された「三井のリハウス」の11代目リハウスガールです。宮沢りえらを輩出したこの登竜門で見せた圧倒的な透明感は、彼女に「平成を代表する正統派美少女」という称号をもたらしました。テレビドラマ『ケータイ刑事 銭形零』や『女王の教室』など話題作への出演が続き、順風満帆な子役時代を過ごします。
しかし、彼女が本物の映画女優として覚醒したのは、2007年の主演映画『天然コケッコー』(山下敦弘監督)でした。過疎化が進む村の分校に通う右田そよ役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。自然光に包まれた田舎町で、思春期の揺れ動く感情を台詞以上に視線や呼吸で表現したこの作品は、今なお邦画史に残る青春映画の金字塔と称されています。
20代に入ると、世間が求める「清純派」のパブリックイメージと、表現者として挑戦したい役柄との間に生じるギャップに直面します。この壁を打破すべく、彼女は園子温監督のドラマ『みんな!エスパーだよ!』でヤンキー気質のヒロインを演じるなど、自らの殻を激しく打ち破る選択を敢行しました。
その果敢な挑戦が実を結んだのが、2015年の是枝裕和監督作『海街diary』です。四姉妹の三女・千佳役を演じた彼女は、奔放でありながら家族の緩衝材となるユニークなキャラクターを好演し、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。記号化された美少女から、生活の匂いを纏う卓越したバイプレイヤーへの脱皮を決定づけました。