日本の歌謡史において、女性演歌歌手が果たしてきた役割は極めて巨大です。時代の空気感とともに受け継がれてきた名声と実績を、世代ごとの系譜として俯瞰します。
昭和歌謡の礎を築いたのは、まぎれもなく美空ひばり(『川の流れのように』『愛燦燦』)や島倉千代子(『人生いろいろ』『からたち日記』)といった国民的歌手たちです。独特のハスキーボイスでトラック運転手をはじめ全国の労働者の心を掴んだ八代亜紀(『舟唄』『雨の慕情』)、圧倒的な声量と唸り節で聴衆を圧倒した都はるみ(『北の宿から』『大阪しぐれ』)の存在は、今なお演歌の金字塔として輝きを放ちます。
平成から現在に至るまでシーンの中核を担い続けているのが、石川さゆり(『津軽海峡・冬景色』『天城越え』)、坂本冬美(『夜桜お七』『また君に恋してる』)、藤あや子(『むらさき雨情』)、伍代夏子(『忍ぶ雨』)、天童よしみ(『珍島物語』)らの世代です。彼女たちは伝統的な情念の歌唱を継承しながらも、ロックやJ-POPとのクロスオーバーを果敢に仕掛け、演歌の間口を劇的に広げました。
2000年代以降は、「ご当地ソングの女王」としてNHK紅白歌合戦の連続出場記録を重ねる水森かおり(『鳥取砂丘』)や、確かな歌唱力で同世代の支持を集める市川由紀乃(『心かさね』)らが中堅の実力派として確固たる地位を確立。さらに近年は、アイドル出身の経歴を持つ丘みどり(『佐渡の夕笛』)や、圧倒的な低音ボイスを誇る田中あいみ、中学生でプロデビューを果たし新世代の旗手となった梅谷心愛など、ビジュアルと卓越したスキルを兼ね備えた若手が次々と頭角を現しています。