真言宗室生寺派の大本山である室生寺。弘法大師 空海にまつわる深い真言密教の伝統を今に伝えるとともに、厳格な修験の山でありながら女性の信仰を受け入れてきた包容力の歴史を持つ。山深い境内へと一歩足を踏み入れると、外界の湿気を含んだ空気が一変し、凛とした清涼な気配に包まれる。
初夏の室生寺を象徴するアジサイ(紫陽花)は、青、紫、淡いピンク、純白と、土壌や日当たりによって実に多様な表情を見せる。長い歴史を刻んだ古材の深い木目や、青々とした苔の絨毯を背景に咲き誇るその姿は、都市部の公園や庭園で見る花々とは一線を画す静かな気品を漂わせている。