インターネット上の口コミや動画配信では、「このプチプラ美容液で長年のニキビ跡が消滅した」といった刺激的な宣伝文句が飛び交っています。しかし、皮膚科学の見地から客観的事実を述べるならば、ニキビ跡を消す市販薬の効果は「跡のタイプ」によって180度異なります。すべてのニキビ跡が一括りに消えるという言説は、完全な誤解か誇大広告に過ぎません。
ニキビ跡と呼ばれる病態は、主に以下の3つのステージに大別されます。
第1が、アクネ菌との戦いで毛細血管が拡張・増生したまま残る「炎症後紅斑(赤み)」です。第2が、激しい炎症によってメラノサイトが過剰刺激され、表皮層にメラニン色素が沈着した「炎症後色素沈着(茶色いシミ)」。そして第3が、好中球やマクロファージが放出した分解酵素によって真皮の膠原線維(コラーゲン)が破壊され、皮膚が陥没した「萎縮性瘢痕(クレーター)」です。
ドラッグストアで販売されている一般用医薬品(第2類・第3類医薬品)や医薬部外品が法的にアプローチできるのは、表皮の角質層から基底層付近で起きている代謝のサポートに限られます。つまり、赤みやメラニンの沈着に対しては肌の修復サイクルを早める形で確かなサポート効果を発揮しますが、真皮層の構造そのものが失われたクレーターに対しては、いかに高価な市販外用薬を塗り重ねても凹みを物理的に持ち上げることはできません。この医学的な前提を無視して購入を続けることこそが、「市販薬は効かない」という深い失望を生む最大の構造的要因です。