日本の漫画史を振り返る上で、彼の存在を抜きに語ることはできない。貸本漫画の時代から頭角を現し、その後、かつて青林堂が刊行していた伝説の漫画雑誌『月刊漫画ガロ』を主要な舞台として、既存の枠組みを打ち破る革新的な作品群を次々と放った。
従来の劇画の枠を超越した彼の手法は、やがて「私漫画」と呼ばれる独自のジャンルへ結実する。夢の体験をそのまま作品化した不朽の奇作『ねじ式』は、脈絡のない虚無感と圧倒的な抒情性で当時の若者や知識人に強烈なトラウマと衝撃を与えた。
一方で、自身の落ちぶれた姿や生活の苦難を投影した『無能の人』シリーズでは、自己の無力さを冷徹かつユーモラスに描出。多摩川の河原で石を売る男の物語は、消費社会に対する最大の皮肉であり、存在の孤独を見事に描き切った傑作として語り継がれている。