当時、多くの消費者が「原料が中国から届かない」と思い込んでいましたが、これは完全な誤認でした。経済産業省や業界団体の統計データが示す通り、日本のトイレットペーパーの国内生産自給率は約97〜98%に達しており、海外依存度は極めて低い構造になっています。
さらに、原材料の約6割以上は国内で回収された牛乳パックや新聞・段ボールなどの「古紙パルプ」が占めており、海外からの供給遮断によって製造ラインが止まるリスクは構造的にほぼ存在しませんでした。実際、製紙メーカーの倉庫には数週間から1カ月分以上の製品在庫が山積みされており、工場の生産ラインも24時間体制でフル稼働を続けていたのです。
では、なぜ店頭から商品が消えてしまったのでしょうか。そのボトルネックとなったのは生産能力ではなく「物流と店舗の保管スペース」でした。トイレットペーパーは容積が非常に大きく、トラック1台に積載できる重量が限られる上、ドラッグストアやスーパーのバックヤードにも数日分しか保管できません。急激に通常の数倍から数十倍の需要が殺到したことで、配送が物理的に追いつかず、陳列棚が空になるタイムラグが生じてしまったのが品薄の真実でした。