戦後復興から高度経済成長期を経て、日本の自動車産業が急成長を遂げると同時に、裏社会の愛車史も大きく変化した。昭和30〜40年代、最初にアウトローたちを魅了したのは、アメリカ車だった。キャデラックやシボレーといった巨大なアメ車は、米軍基地周辺のカルチャーとも結びつき、成功の証として街を彩った。
やがて国産高級セダンが台頭する。日産・プレジデントやトヨタ・クラウンが市場を席巻すると、組長クラスの車両として標準化された。1980年代のバブル経済期には、ベンツの500SELやAMGモデルが爆発的なブームを巻き起こす。「黒塗りのベンツ=触れてはならない車」という強烈なパブリックイメージが定着したのもこの時期だ。
防犯面におけるカスタムも独自に進化した。極厚のスモークフィルム、二重のナンバープレート固定具、緊急時の通信機材、さらには下回りの補強。これらは単なるドレスアップではなく、抗争時の生存率を少しでも上げるための必然的な装備だったのだ。