千畳閣の堂内を巡ると、壁の代わりに柱や梁の上にびっしりと掲げられた絵馬の数々に目を奪われます。これらは江戸時代から明治時代にかけて、武士や商人、歌舞伎役者、航海安全を祈願する船乗りたちから奉納された貴重な文化財です。
中には、明治の激動期に奉納された大迫力の武者絵や、当時の暮らしを鮮やかに描いた風俗画も残されています。また、厳島神社周辺の歴史を象徴するアイテムとして見逃せないのが、堂内に飾られた巨大な杓子(しゃくし)です。「敵を召し捕る(飯取る)」という語呂合わせから、宮島では杓子が縁起物として重宝されてきました。かつて兵士たちが戦勝祈願として奉納した杓子の数々は、この場所が武士たちにとっても特別な聖地であったことを物語っています。
すぐ隣にそびえ立つ朱塗りの五重塔(重要文化財)との対比も見事です。和様と唐様が巧みに融合した室町時代の五重塔と、素木造りで未完の千畳閣が並び立つ姿は、宮島屈指のフォトスポットとして親しまれています。