なぜ彼らは、数千円を払ってプロに頼むこともせず、数百円のドライブスルー洗車機にも通さず、わざわざ真夜中に自分の手を凍らせてまで車を洗うのか。ブースに立つ一人のドライバーに目を向ければ、その理由は明白だ。
ホイールの隙間にこびりついた微小なブレーキダストを細いブラシで掻き出し、鉄粉除去剤の化学反応で紫色に染まる飛沫を逃さず洗い流す。塗装面の微細な洗車キズすら許さないカーディテイリングの世界において、高速回転するブラシに愛車を預ける行為は論外なのだ。手洗いでしか届かないドアヒンジの内側、グリルの網目一つひとつに至るまで、納得がいくまで磨き上げる。そこにあるのは作業ではなく、工芸に近い手ざわりだ。