歴史をさかのぼると、ポケットの有無は明確な性差を映し出す鏡だった。19世紀まで、男性の服には多数のポケットが縫い付けられ、金や道具を運ぶ自立の象徴とされていた。一方、女性は衣服の下に独立した袋を縛り付けるか、小さな手提げ袋を持つことしか許されていなかった。
20世紀初頭、この構造に風穴を開けたのがココ・シャネルだ。彼女は男性服の要素を取り入れ、女性の自立と行動力を象徴する実用的なポケット付きスーツを提案した。しかし第二次世界大戦後、クリスチャン・ディオールが発表した「ニュールック」が潮流を一変させる。絞り込まれたウエストと膨らんだスカートラインを美しく見せるため、ポケットは「シルエットを崩す余計なもの」として再び排除された。この歴史的分岐点が、現代のレディースファッションに強い影響を残している。