湯浴みを終え、火照った身体のまま茶屋へ戻ると、囲炉裏の周りには素朴ながら圧倒的な存在感を放つ料理たちが待っている。ここで外せないのが、静岡の食文化を体現する黒い出汁の「おでん」だ。牛すじや昆布の旨味が限界まで染み込んだ大根や黒はんぺんに、青のりとダシ粉を豪快に振りかけて頬張る。口いっぱいに広がる濃密な旨味と湯上がりの爽快感が、完璧なコントラストを描き出す。
季節が合えば、地元で獲れた猪肉を使った猪鍋や、山で採れたばかりの山菜の天ぷらが卓に並ぶ。都会のレストランで出される洗練されたジビエとは一線を画す、力強く、それでいて全く臭みのない肉の旨味。山の水と空気、そして土地の恵みをそのまま皿に移し替えたような料理は、胃袋を満たすだけでなく、身体の奥底からエネルギーを満たしていく感覚を呼び起こす。