美術史において、ラッセンは長らく正当な評価を受けてこなかった。キャンバスにエアブラシとアクリル塗料を組み合わせ、波の飛沫や光の屈折を驚異的な精度で描き出すその技法は、「職人的なイラストレーション」として一括りにされがちだったからだ。
しかし、ハワイのマウイ島で育ち、プロサーファーとしても活動したラッセンの海に対する解像度は極めて高い。海面上の月光と、水深数メートルの海中世界を一枚の画面に同居させる「二重構造(Two Worlds)」の構図は、彼の代名詞であり、自然への深い洞察がなければ成立しない。
現代のアート修復家や技法研究者は、彼の光の表現についてこう指摘する。「ラッセンのアクリル塗料の積層技法とエアブラシによるぼかしの精度は、当時のイラストレーションの域を完全に超えている。特に暗部から明部への無段階のグラデーションは、現物の絵画でしか味わえない奥行きと発色を備えている」。