朝ドラのヒロインといえば、歴史的な偉人や特定の分野で才能を開花させる先駆者が描かれることが少なくない。しかし、谷田部みね子は違った。特別な才能を持つわけでもなく、世界を変えるような大望を抱いているわけでもない。ただ家族を愛し、目の前の仕事に誠実に向き合う、どこにでもいる普通の少女だ。
茨城県北部の農村・奥茨城村から、東京・向島のトランジスタラジオ工場へ。そして赤坂の洋食屋「すずふり亭」へ。みね子の歩みは、そのまま昭和の東京を支えた名もなき若者たちの足跡と重なる。大きな事件が起きない日々のささやかな喜びや葛藤を丁寧に紡ぎ出した脚本は、見る者に「自分の人生もこれでいいんだ」という静かな肯定感を与えてくれた。