夕暮れ時、地面に開いた直径1〜2センチほどの真円の穴を見つけたら、それはドラマの幕開けだ。雨上がりの蒸し暑い夕方、気温が25度前後を保ち、風が穏やかな日の日没直後から夜8時頃にかけて、幼虫たちは一斉に地上へと這い出す。彼らは地表近くまでトンネルを掘り進め、前脚で外の気温や湿度、光の微細な変化を感知して「今夜だ」と決断を下す。
穴の周囲に盛り土のような「煙突」が作られている場合、脱出の瞬間は極めて近い。天敵であるカラスやアリの活動が鈍る夜間を狙い、幼虫は垂直に登れる樹皮や草の茎を目指してひたすら歩く。爪がしっかりと引っかかる場所を確保すると、身体を小刻みに揺らして固定し、背中が縦に裂け始める。この「位置決め」の正確さこそが、羽化の成否を分ける最初にして最大の関門だ。