では、なぜクリエイターや出版社はあえて子供たちに恐怖を与える作品を作り続けるのか。児童文学の専門家や福音館書店をはじめとする老舗出版社が提示する視点は、実に深い意味を持っている。
恐怖とは、人間が生き伸びるために不可欠な自己防衛本能の第一歩である。絵本という安全な環境の中で「恐ろしいもの」や「理不尽な存在」に直面する体験は、子供たちにとってネガティブな感情の受け皿となり、現実世界の割り切れない不条理に対する耐性を育む役割を果たしている。ただ甘いだけの物語では届かない心の深層に、恐怖という強い感情だからこそ届く光があるのだ。