急な石段を下りきった先で出迎えてくれるのは、息をのむほど壮麗な社殿群です。現在の本殿、拝殿、楼門は、寛永12年(1635年)に江戸幕府3代将軍・徳川家光の命によって造営され、5代将軍・綱吉の時代に大規模な改修が行われました。
社殿は豪壮な「貫前造(ぬきさきづくり)」とも呼ばれる独特の変形権現造で、極彩色の日光東照宮を彷彿とさせる見事な彫刻や漆塗りが施されています。これら主要建造物はすべて国指定重要文化財に指定されており、建築史の観点からも極めて高い価値を誇ります。
境内には、歴史の重みを肌で感じられるスポットが点在しています。その代表格が、樹齢を重ねた名木「綾女の松(あやめのまつ)」です。比売大神の機織りにちなむ伝承を残し、長きにわたり神域を見守ってきた巨木は、訪れる人々に静かな威厳を与えています。さらに、境内裏手に広がる鬱蒼とした社叢(鎮守の森)も県指定の天然記念物であり、一歩足を踏み入れるだけで都会の喧騒を忘れさせる清廉な空気が漂っています。