近代文学の巨匠・夏目漱石の作品にも、「難儀」は頻繁に顔を出す。主人公たちが世間のしがらみや人間関係の煩わしさに直面した際、軽妙でありながら皮肉の効いたトーンでこの言葉が用いられた。漱石の文体は、重苦しい現実をクスッと笑える人間ドラマへと昇華させる力を持っていた。
翻って現代の報道現場ではどうだろう。公共放送であるNHKのニュースやドキュメンタリー番組では、過疎化に悩む地方自治体の現状や、複雑化する社会制度に翻弄される市民の声としてこの言葉が採用されることがある。感情的になりすぎず、かといって冷酷でもない絶妙な距離感を保てる言葉として重宝されているのだ。