歴史資料や古典小説を読んでいると、「自鳴琴」とよく似た「自鳴鐘」という表記を目にすることがあります。一字違いのこの二つは、江戸時代における西洋機械の受容を象徴する重要な用語ですが、指している対象は明確に異なります。
「自鳴鐘(じめいしょう)」は、定刻になると自動で鐘を打って時刻を知らせる機械式時計(時打ち時計)を意味します。室町時代末期から戦国時代にかけてフランシスコ・ザビエルら宣教師によって持ち込まれた置時計や掛時計がその発端です。
これに対し、「自鳴琴」は単に時を告げる鐘の音にとどまらず、旋律(メロディ)そのものを連続して奏でる楽器として明確に区別されていました。機械が自発的に音を出す技術において、実用性を重視した「時計=自鳴鐘」と、芸術的娯楽を追求した「楽器=自鳴琴」という見事な対比が成り立っています。