重大なリスクがあると分かっていても手を伸ばしてしまう背景には、生理的・病理学的な目を擦る理由が存在します。目を擦りたくなる衝動は、主に以下の3つの要因によって引き起こされます。
第1の要因は、スギ花粉やハウスダスト、ペットの毛などを原因とするアレルギー性結膜炎です。結膜にアレルゲンが付着すると、肥満細胞からヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が放出され、知覚神経を強烈に刺激して痒みを発生させます。ここで目を擦ってしまうと、刺激によって周囲の肥満細胞が次々と破壊され、さらに大量のヒスタミンが結膜内にばら撒かれるという最悪の悪循環に陥ります。
第2の要因は、現代人の大半が抱えるドライアイの症状です。パソコンやスマートフォンの長時間凝視によって瞬きの回数が減少し、涙の安定性が崩れると、角膜の表面が乾燥して微細な傷が生じます。この乾燥による摩擦や不快感を、脳が「異物がある」「痒い」と誤認し、目を擦る衝動へと変換させてしまうのです。
第3の要因は、疲労や眠気による自律神経の変動です。眠気を感じると副交感神経が優位になり、血流の変化やまぶたの重さから無意識に目元を触りたくなります。擦る瞬間の強い刺激は、ゲートコントロール説(痛覚や圧覚刺激が痒み信号の伝達を一時的に遮断する神経機構)により一瞬の「気持ちよさ」をもたらしますが、これは神経の錯覚に過ぎず、組織破壊を着実に進めるトラップに他なりません。