朝ドラ『スカーレット』の主人公・川原喜美子のモデルとなったのは、日本を代表する陶芸家である神山清子氏です。「女性が窯に入ると窯が穢(けが)れる」「男の仕事を奪うな」という猛烈な男尊女卑と偏見が渦巻いていた時代に、信楽焼の長い歴史の中で初めて女性として独自の窯を築き上げました。
1936年に長崎県佐世保市で生まれた神山氏は、幼少期に滋賀県信楽へ移住。生活は困窮を極め、幼い頃から家計を支えるために陶器の絵付け作業に従事しました。繊細な絵付けの技術で頭角を現したものの、周囲の職人たちからは冷ややかな視線を浴びせられ続けます。それでも土をこね、火と対話する情熱を捨てることはありませんでした。
独立後は、古代信楽焼が持っていた「釉薬(ゆうやく)を使わずに薪の灰だけで発色させる素朴な美」に魅せられ、陶芸界の常識を覆す数々の作品を生み出すことになります。その道のりは、まさに偏見と貧困との果てしない戦いでした。