生体は手術による組織損傷、麻酔、出血、精神的ストレスを「重大な危機」と認識します。この生体侵襲に対抗して恒常性(ホメオスタシス)を維持し、創傷を治癒して元の健康状態へ戻す一連の反応を体系化したものがムーアの分類です。1952年に発表された原著『The Metabolic Response to Surgery』以来、70年以上にわたり周術期管理の基礎理論として活用され続けています。
手術直後は組織破壊に対処するため、エネルギーを急速に生み出す「異化(分解)」が優位になります。その後、侵襲が治まるにつれて組織を修復・再建する「同化(合成)」へとシフトしていきます。ムーアはこの回復過程を時間軸と代謝動態に基づき、以下の4つの連続する病相に区分しました。
① 第1相:傷害期(異化期・コルチコイド期)
② 第2相:転換期(コルチコイド離脱期・利尿期)
③ 第3相:同化期(筋力回復期・タンパク同化期)
④ 第4相:脂肪蓄積期(完全回復期)
術後急性期の患者観察において「今、生体がどのステージにあり、どのような反応が正常なのか」を判断するうえで、この4病相の理解は欠かせません。