国語学者の菊地康人氏らが議論を重ね、文化庁の文化審議会が作成した『敬語の指針』を紐解くと、敬語表現の本質は単なるルールの丸暗記ではなく、相手との心理的距離感や敬意の表出にあることがわかる。文化庁が実施する『国語に関する世論調査』でも、時代の変化とともに言葉に対する人々の不快感や許容度の境界線が常に揺れ動いている実態が浮き彫りになっている。
実は、明治から昭和初期の文献を遡っても「了解」が明確な無礼にあたると定義されていたわけではない。しかし、戦後の企業組織が強固になる過程で、言葉の語感に対する過敏さが形成されていった。行政や学術の指針が示す通り、敬語は固定された法律ではなく、社会的な合意形成によって形作られる生き物なのだ。