木嶋事件が社会に与えたインパクトは、ノンフィクション作家・佐野眞一氏による著書『毒婦 平成木嶋佳苗騒動』をはじめ、数々のドキュメンタリーやコラムで論じられてきた。容姿や年齢に対する世間の偏見をあざ笑うかのように、巧みな調理技術と官能的な言葉で男たちから大金を提示させた彼女の手口は、日本社会の歪みを浮き彫りにした。
世間が彼女を「毒婦」と蔑みながらも、その一挙一動から目を離せなかったのはなぜか。メディアが掻き立てるスキャンダリズムと、当事者である木嶋死刑囚自身の自己プロデュース能力が噛み合わさった結果、彼女は単なる受刑者を超えた「時代のアイコン」として消費されていったのである。