日本のTVドラマ史において、衣装がこれほどまでに社会現象となった例は他にない。フジテレビ月9枠の大ヒットドラマ『HERO』で木村拓哉が着用したブラウンのキャメルレザーダウンジャケットは、放送当時から問い合わせが殺到し、街中にそのスタイルを模倣する人々があふれかえった。型破りな検察官・久利生公平というキャラクターの自由さと譲れない信念を、あの着慣れた風合いの革ジャン一枚で見事に表現してみせたのが白山春久だ。
さらに時を経て、TBSテレビの日曜劇場『グランメゾン東京』で見せたシェフ・尾花夏樹のスタイルも記憶に新しい。型に嵌まらない料理人の情熱と挫折、そして再起を懸けた仕草を引き立てるヴィンテージのチェックシャツや、味のあるデニム、無骨ながらも品格を漂わせるブーツ。白山の手がけるスタイリングは、服が主張しすぎるのではなく、演者の身体動作や役柄の深みと完全に同化する。俳優・木村拓哉の魅力を極限まで引き出し、観客の視線を釘付けにするビジュアルの魔法は、二人の長年にわたる絶妙な信頼関係と感性の共鳴から生み出されている。